十数年前の事、リニューアル開店の店舗のメニュー開発依頼の要請を受けていた折、三代目の若いご店主から、彼が横浜の胡麻油会社に教わった「無量寿」と言うそばがある事を聞きました。
何でも釧路の郷土そばで、発祥はこの地のそば名店だそうです。
このそばには、その横浜の胡麻油会社の純正胡麻油濃口を使わなければ「無量寿」とは言えないと教わりました。教えに行って教わっているのだから、これ良いの?と思いつつも、見たことのないそのそばを、自分なりに作っていました。後に調べれば、御本家のそばは海苔少なめで、生卵と刻み葱がのせてありました。 私流は海苔たっぷりで、半生サラダ節のかつお節たっぷり。今回は、目先を変えて茶そばを「熱盛り」にして、先ずはそばと海苔の香りを楽しんで頂き、油との相性がとても良い半生サラダ節を合わせて、味を引き出しました。
そばの「熱盛り」は、そば屋の通し言葉で「直実」と言います。
「平敦盛」を討った「熊谷直実」に由来する言葉です。
「あつもり」を打った「なおざね」って事ですね。
とても簡単に出来て、香りが良くて私も大好きなこのそば。
茶そばで無くても美味しいですから、ぜひ作ってみて下さい。
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<材料>
・丸眞半生サラダ節 20g・焼き海苔 1枚
・胡麻油 適宜
・茶そばの乾麺 1束
・丸眞そばつゆ<濃縮タイプ>1袋 40ml
・出汁または水 80ml
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<作り方>
1)丸眞半生サラダ節を削る2)焼き海苔は細かくちぎる
3)茹でたそば水でしめずに熱いまま器に取り胡麻油をかけ回す
4)丸眞半生サラダ節と焼き海苔をたっぷりのせる
5)つけ汁で提供する
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材料は至ってシンプル。
茹で上げたそばを水で締めないでそのまま器に取ります。
「茶そばの熱盛り」です。湯気が立ってます。
胡麻油をかけ回して、素早く箸で全体に油を馴染ませます。
後は丸眞半生サラダ節と海苔をたっぷりのせるだけ。
茶そばの香りと、海苔の香りのハーモニー。
丸眞半生サラダ節は、油との相性がとても良いので旨味が倍増します。
そば汁は冷たいままでも、温めても良いです。
熱盛りにしたので、そばを茹でた湯が残っていますから、そば湯で汁を飲むとこれがとても美味しいです。
著者紹介
蕎麦料理研究家 永山塾主宰
永山 寛康
<プロフィール>
1957年(昭和32年)生まれ。
21歳でそば打ちの世界に入る。名人と名高い片倉康雄・英晴父子に師事し、そば打ちの基本を学ぶ。『西神田 一茶庵』『日本橋三越 一茶庵』に従事した後、『立川 一茶庵』で店長を務める。その後、手打ちそば教室の主任講師などを努め、2004年より「永山塾」を開塾。長年研鑚を積んだそば技術やそば料理の技術を多くの人に教える。
感情豊かなそば打ちやそば料理の指導に、プロアマ問わずファンは多い。近年はそば関連企業と連携して、開業希望者やそば店等への技術指導にも活躍中。