家庭で生そばを上手く茹でるのは、難しいものです。何より、そばを美味しく食べるには「そばの茹で」が大切。茹でている鍋が、吹きこぼれてしまったり、麺が沈んで固まったりします。挙句の果ては短く切れたり。そこで、今回は料理のレシピがメインでは無く、「生そば」の茹で方を 取り上げていこうと思います。ほんの少しだけ手間をかけるだけで、家庭でも生そばが上手に茹でられるようになりますよ。
生そばを買い求めると、茹で方の説明書きに「家庭にある、なるべく大きな鍋で茹でて下さいと」とあります。ただ、大きな鍋の湯を沸かすのには、強い火力が必要です。家庭のコンロの火力では、そばを投入して温度が下がると、温度が元の沸騰状態まで戻るのに時間がかかり、湯の煮返りが遅くなり、麺がチリチリと縮んで切れやすくなります。生そばを上手に茹でるのには、何よりも『茹でる鍋と火力のバランス』が大切です。 先ずは、使用する鍋類です。左はそばを茹でるボウル、右は茹でながら湯を注ぎ足していくための鍋。 右は鍋からそばをすくう網。左はそばを水で冷やし、すすぐ為の網とボウルです。
茹でる鍋にボウルを用いると、吹きこぼれる心配がありません。
また、鍋の中で「そばが煮返り」ますから、雪平鍋で茹でるより上手に茹でられます。もう一つの鍋には湯を沸かせておき、そばを茹でたボウルに湯を足して行きます。ただし、ボウルは湯面の重心が少し高いので、作業には十分注意をして下さい。
沸騰したところに、そばを一人前ずつそっとほぐす様に投入します。
上手に茹でるコツは、やさしく、そっと。
箸でかき回すと、切れてしまいます。煮返った湯の中でそばが泳ぐように茹でて下さい。
そのまま、湯の返りに任せてそばが浮いて来て、数回煮返ったらすぐにすくい、水に取って、2〜3回を目安に水を変えてゆすぎます。 昔から、そばを茹でるのは『三返り半』と言い伝えられています。釜の中で、そばが三回くるくると回ったら、すくいあげるまでに半回転。キリッと冷たくしまったそばがお好みならば、氷をはったボウルを別に用意して、網に入れたそばをさっと浸して冷やしてしめると良いでしょう。
さぁ、上手くそばが茹で揚がったら、今回は大根のおろし汁の冷やしそばを作りしょう。
大根をおろします。
ザルで大根の水分を切ります。
大根のおろし汁は「おろし汁の素」にします。
「おろし汁の素」に丸眞そばつゆ<濃縮タイプ> 1袋(40ml)と、適宜に水を加えて、好みの濃さに調節します。
そばの上に大根おろし・九条葱・鰹節をたっぷりのせ、おろし汁をかけて。
行事の多い年末や、お節料理のご馳走に少し疲れた胃にも優しいそばです。
著者紹介
蕎麦料理研究家 永山塾主宰
永山 寛康
<プロフィール>
1957年(昭和32年)生まれ。
21歳でそば打ちの世界に入る。名人と名高い片倉康雄・英晴父子に師事し、そば打ちの基本を学ぶ。『西神田 一茶庵』『日本橋三越 一茶庵』に従事した後、『立川 一茶庵』で店長を務める。その後、手打ちそば教室の主任講師などを努め、2004年より「永山塾」を開塾。長年研鑚を積んだそば技術やそば料理の技術を多くの人に教える。
感情豊かなそば打ちやそば料理の指導に、プロアマ問わずファンは多い。近年はそば関連企業と連携して、開業希望者やそば店等への技術指導にも活躍中。