以前、「生そば」の茹で方を取り上げました。けれども普段、家庭で食べるそばは乾麺が一般的ですね。そこで今回は、乾麺の茹で方の一例をご紹介致します。 レシピとは言えない様なレシピですが、何卒よろしくお付き合い下さいませ。 この茹で方は、16年前にブログに書いた事が本として出版されたおり、少し注目されて、『つきぢ田村』三代目の田村隆先生が、この茹で方を気に入って下さりご自身の著書にて、私の名入りで取り上げて頂きました。 さて、そのやり方は至って簡単。茹でる前にそばを水に浸すだけ。それだけです。
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<材料>
一人前・乾麺そば(蕎麦粉含有量が少ないタイプ)一束 ・丸眞そばつゆ<濃縮タイプ> (1袋)40ml
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<作り方>
1)乾麺に記載されている茹で時間を目安にしてその最低1/2分水に浸す2)水に浸した乾麺を沸騰した湯に入れ茹で時間の1/2分茹でる
3)丸眞そばつゆ<濃縮タイプ>(1袋)40mlを水60mlで割る
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麺の指定茹で時間の1/2を目安に水に浸します。
この麺は、速茹でタイプ(5分茹で)です。
パラパラと軽くほぐしながら入れていきます。
浸す時間は、麺によって調節してください。多少長く浸した方が美味しくなったり、浸し過ぎると麺の表面が溶けてくっついてしまう場合もあります。
たっぷりのお湯に入れます。この時、水を含んだ麺は、多少固まった感じがしています。
麺を入れると同時に。すぐさまぐるっと麺をほぐします。これがポイントです。
生麺は、箸でかき混ぜると切れ易いですが、水戻し乾麺は丈夫ですからしっかりかき混ぜて、ほぐすようにしてください。
茹で時間の目安は、指定茹で時間の1/2分です。ここも麺によって異なりますので、調節してください。
茹で比べてみました。左の山が普通に5分茹でたそば。右は2分30秒水に浸して2分30秒茹でたそば。写真ではわかりにくいけれど、若干水戻しのそばの色が薄いです。
さぁ、食べ比べてみましょう。
丸眞そばつゆ<濃縮タイプ>(1袋)40mlを水60mlで希釈します。
う〜む、正直言ってそれほど変わらない感じ。敢えて言えば、水戻しの方が若干しなやかな食感があります。浸水時間が足らなかったのかもと思いました。麺によっては、はっきりと違いがわかる物もあるので、いろいろな種類の乾麺を試してみるのも、一つの楽しみ方かも知れません。
生麺はそばの味が美味しさが重要要素です。それに比べて乾麺はやはりそばつゆが決め手。そばの味よりつゆの味が美味しさを左右しますね。今回は、薬味を使わずにシンプルにそばの味とつゆの味を楽しみました。
当時、この茹で方と数種のそば料理がテレビの全国放送で、まるまる一時間放映されることになりました。これは生での放送だったので、「やったぜ」とばかりに意気揚々と店に帰ったら、スタッフ達が口を尖らせて「三時間電話が鳴りっぱなし!仕事になりません」と。その後も、一週間は問い合わせの電話がひっきりなしにかかってきました。その度に散散に文句を言われ、喜んで良いのか悪いのか、何とも複雑な想いでした。
最近、YouTubeやテレビでこの水戻しの茹で方が紹介されているのを良く見かけます。元々は、私も師匠の問わず語りを聞いた覚えがあっただけで、当然、元祖は私ではありません。しからば元祖は!?と言っても、さーてどこかの誰かが、昔からやっていたのでしょうねと言うことで。
ただし、十数年前にメディアにて、最初にこの茹で方を紹介したのはこの私です。
だから元祖ではないけれど、もしかしたら家元・本家・本元・宗家・直伝・伝来、発祥、相伝・・・何か地方の名物お菓子屋さんの店先みたい。まぁ、そんな事はどうでも良いですけれど。
ねぇ、何よりここは一つ試しに一度、水戻しで乾麺!やってみてはいかがでしょうか。もしも、上手に出来なかったら、そこは「かんめぇん」して下さい。これは、当時からの変わらぬ元祖・家元・本家のダジャレでございます。
著者紹介
蕎麦料理研究家 永山塾主宰
永山 寛康
<プロフィール>
1957年(昭和32年)生まれ。
21歳でそば打ちの世界に入る。名人と名高い片倉康雄・英晴父子に師事し、そば打ちの基本を学ぶ。『西神田 一茶庵』『日本橋三越 一茶庵』に従事した後、『立川 一茶庵』で店長を務める。その後、手打ちそば教室の主任講師などを努め、2004年より「永山塾」を開塾。長年研鑚を積んだそば技術やそば料理の技術を多くの人に教える。
感情豊かなそば打ちやそば料理の指導に、プロアマ問わずファンは多い。近年はそば関連企業と連携して、開業希望者やそば店等への技術指導にも活躍中。