コンビニ等で「恵方巻き」を見かける様になるまでは、その存在すら知らなかった私でした。急速に流行り出したこの食べ物に少しばかり惹かれ、そばで恵方巻きを作ったのは、かれこれ二十年くらい前でしたか。ほんの数年の間は作っていましたが、近年は作る事も無く過ぎていました。来節はもっと良い事があります様にと、願いを込めて「そばの恵方巻き」を久々に作りました。そば寿司は手間がかかり確かに面倒なところもあるけれど、いざ作ってみれば慣れて来ますから、この時期に是非とも挑戦して見て下さい。そばを茹でて、具と一緒に海苔で巻けば良いだけですから、力を抜いて気軽に作りましょう。
<材料>
そば恵方巻き2本分
◎煮干瓢・椎茸
干瓢 長い物を1本
干し椎茸 15g
丸眞そばつゆ<濃縮タイプ> 1袋(40ml)水または出汁60ml
砂糖 大さじ1杯
◎甘酢
酢 100ml
砂糖 大さじ2杯
塩 ひとつまみ
・そば 一本あたり70g(2本分140g)
・焼き海苔 全形2枚
◎巻く具材はお好みで
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<作り方>
◎煮干瓢・椎茸
1)丸眞そばつゆ<濃縮タイプ>1袋(40ml)を水または出汁60mlで割る
2)干瓢と干し椎茸は戻しておき干瓢は22cmの長さに切り椎茸は細く切っておく
3)1のつゆに砂糖を溶かし2の干瓢と椎茸を20〜30分を目安に弱火で煮る
4)焦げ付かない様に注意しながら煮あげて冷ます
◎甘酢
1)鍋に入れた酢に砂糖を溶かす
2)塩をひとつまみ加えてから冷ます
太巻きそば寿司の作り方は写真で順に説明して行きます
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丸眞そばつゆ<濃縮タイプ>を水または出汁でわって砂糖を加えて、椎茸と干瓢を一緒に煮ていきます。
焦がさない様に注意しながらじっくり煮あげていきます。冷ますと味が染みていきます。この干瓢と椎茸の微妙な甘みがそば寿司の味を決めますので、出来れば自分で煮たいところですが、時間が無ければ市販のものを使っても構いません。
甘酢を作ります。この甘酢もそば寿司を作る上で大事な要素です。砂糖を多めに使うことで、そば寿司にした時のそばのパサパサ感を抑え、そば同士がくっいてしっとりとばらけにくく仕上がります。酢の量に対して砂糖が多いと思われる事でしょうけれど、今回は恵方巻きなので通常のそば寿司を作る時より砂糖の量を抑えています。
砂糖を煮溶かします。
塩をひとつまみ入れて冷まします。
出汁を控えめにして甘めに味を付けた卵を七寸(21cm)の卵焼き器で焼きます。
巻く具材はお好みで。卵焼きも市販のもので充分です。
今回そばは、乾麺の「茶そば」と「さらしな」の二色を使用しましたけれども、これも普通の乾麺一種類一色でかまいません。一巻き分が70g見当で巻けます。
そばを茹でて、良く水を切ってボウルに移します。
冷やしておいた甘酢をそばに注ぎ入れます。
そばにまんべんなく甘酢を浸したら(この間10秒くらい)、
もう一つのそばのボウルににザルを置いて甘酢を移します。
まんべんなく甘酢を浸したら、前のそばに同じ様に甘酢を移します。これを2回繰り返しそばの表面に甘酢をコーテイングしていきます。ここでは、二種のそばを使っているので甘酢をそれぞれのそばに移しています。もし三種類のそばを使うなら甘酢のかけ回しをそれぞれのそばに施すので手間はかかります。一種のそばなら、甘酢を行き渡らせてからザルで甘酢を切るだけですから、甘酢をかけ回す事無しに簡単に出来ます。
ここがきれいなそば寿司作りのポイントです。複雑そうに感じますが、やってみると意外に簡単です。それではやってみましょう。
親指に引っ掛ける様にして持ち上げたそばを片方の手で流れを作る様に延して形を整えます。この写真は、左手に引っ掛けて右手で慣らしているところです。巻き簾の表側(平らな部分)を上にして縦に置いた巻き簾にそばを置いていきます。
左手と右手交互に使いそばを敷いていきます。糸目が1本と少しくらいほ幅を目安にします。『巻き簾は表・簾目は縦』糸目の結び目ほ方向を確認して下さい。
同じ様に右手で引っ掛け、左手で流れを作る様に整えて巻き簾に置く。巻き簾を縦目に使う理由は、このままの状態でそばが少し乾くまで放置する為です。そばの表面が乾くまで15分くらい待ちます。
そばの表面を触って、ペタペタと指にくっついてくる様でしたらもう大丈夫。焼き海苔の艶のある方を上にして、そばに乗せてます。
手の平でそっと馴染ませます。馴染ませたその手を海苔に置いたままにして、
そのまま巻き簾を裏返しひっくり返してそばと海苔を手で受けたまま、そばが離れた巻き簾を裏返し『巻き簾は裏・簾目は横』に置きます。
受けて手に乗っているそばを巻き簾に乗せます。『巻き簾は裏(かまぼこ型になっている方)・簾目は横』糸目の結び目は上にあります。ここまで来れば、後は巻くだけ。
具材はどうぞお好みで。今回の具材はほうれん草・干瓢・卵焼き・サーモン・いくら・煮椎茸・寿司ガリ・おろし山葵を巻きました。
具材を並べたら、いよいよ巻いていきます。
巻き簾の下に親指を入れて、他の指で具材を押さえながら、
先端のそばの端までくるりと一気に持っていきます。巻きが緩い様なら落ち着いて指で巻き込んでやりましょう。そば寿司は通常の米の巻き寿司と違い、粘着力が弱いのでのんびりしていると全体がバラけてしまいます。
巻き終わったら、暫しそのままに。すぐに切るとそばがバラけて上手に切れません。
端を切り落とした切り口です。そば寿司はとても切りにくいので、包丁を水で湿らせてから布巾で軽く水気を拭ってから切ると、きれいに上手く切れます。
今年令和7年は西南西の方角に向いて食べるとの事。
豆まき・柊・大豆。鰯の頭も信心から。鬼は外で福は内。
食べ切れ無いから切り分けると、丸一本を食べる恵方巻きの御利益が無くなるのかな?!今、流行りの超短と言う事でご勘弁を。
著者紹介
蕎麦料理研究家 永山塾主宰
永山 寛康
<プロフィール>
1957年(昭和32年)生まれ。
21歳でそば打ちの世界に入る。名人と名高い片倉康雄・英晴父子に師事し、そば打ちの基本を学ぶ。『西神田 一茶庵』『日本橋三越 一茶庵』に従事した後、『立川 一茶庵』で店長を務める。その後、手打ちそば教室の主任講師などを努め、2004年より「永山塾」を開塾。長年研鑚を積んだそば技術やそば料理の技術を多くの人に教える。
感情豊かなそば打ちやそば料理の指導に、プロアマ問わずファンは多い。近年はそば関連企業と連携して、開業希望者やそば店等への技術指導にも活躍中。