そばがきレシピ その一/そばがきの基本の『き』

そば粉本来の味をそのまま楽しめる、素朴な『そばがき』
いわば、そば粉をもっともプリミティブに味わう食べ方です。
けれども、ちょっとした加工と工夫次第で、さまざまな形に変わり、別の食べ方へと生まれ変わります。

作り方は、そば粉と水を混ぜ合わせ、火にかけて練るだけです。ですから、そばがきに「これが正しいレシピ」というものはありません。しかし、風味良く仕上げるためのちょっとした「コツ」はあります。
初めてそばがきを作る方にもわかりやすく、一緒に作ってみましょう。作ったそばがきは、回を分けて応用レシピにも挑戦していきたいと思います。まずは、そばがきの基本の『き』から始めましょう。

そばがきの作り方は、大きく分けて三種類あります。お椀にそば粉を入れて熱湯を注ぐ「椀がき」、鍋にそば粉を入れて熱湯で練る「湯がき」、そして水を加えて練る「水がき」です。今回は、失敗が最も少ない「水がき」で作りましょう。

そばがきを作るときに、いちばん大切なのは「粉と水の割合」です。
昔は、練り上げたそばがきを木の葉型などに形作ることが多かったため、粉1に対して水1.5の割合が一般的でした。
まずは、この比率で作ってみましょう。そば粉80gに水120gです。そば粉を富士山の形にしてーー

計量した水を鍋ふちから加えます。

山でいえば七合目あたり。そばがきを早く仕上げるため、かつては茹で釜の湯をそのまま使って「湯がき」をすることが多く、水の量を正確に計る余裕がありませんでした。そのため、一度で加水の具合を見極める際の目安となるのが、この七合目という感覚です。

水ごねですから慌てず丁寧に、そば粉と水を混ぜ合わせます。

ダマが無くなったら火にかけます。

火にかけると次第に生地が固まり出して、手に感じる抵抗が強くなりますから、木ベラを持つ手を返すように、練り延ばしながら休まずに練っていきます。

このくらいで火を止め、生地がなめらかになるまで、ゆっくりと練り上げていきます。仕上げは、そのまま器に盛っても、濡れ布巾やラップに取って形を整えてもよいでしょう。

濡れ布巾で形を整えたそばがきを、器に入れてそば湯を注ぎ入れました。

ここからは、食べやすい大きさに整える練り方です。鍋ふちにそばがきの生地をこすりつけるようにして数回練ります。ふちの生地の表面が滑らかになったところでーーー

生地に木ベラを差し込んでーー

勢いよく一気に切り上げます。

小皿を水で濡らしてから、軽く振って水気を切ります。

木べらで生地を小皿にこすりつけるように取り分けます。小皿の深浅や大小を変えることで、器ごとに趣の異なる形を作ることができます。

半月の形に仕上がります。そば粉1に対して水1.5のそばがきは、練るのに少し力が要ります。少しボソッとした食感ですが、それがまたそばがきらしい、素朴な味わいをかもします。

丸眞そばつゆ<濃縮タイプ>を、そのままつけ汁として使います。しっかりと出汁がきいているので、少しつけるだけでそばがきの味がいきてきます。
もちろん、お好みで出汁や水で薄めてもかまいません。

焼き海苔とたっぷりの薬味を用意しました。

そばがきを、たっぷりのそば湯に浮かべる「湯溜めそばがき」にしました。器には、趣のある鉄瓶を使います。そば粉を水に溶き沸かした、その湯を器に張って、そばがきを入れれば、最後まで温かくいただけます。

そばがきを海苔に取ってーーー

海苔と薬味と湯気立つそばがきをほおばれば、香りと温もりが口いっぱいに広がります。

そばがき基本の『き』でした。そばがきは、かたさやそば粉の粗さで、味わいや食感がさまざまに変わります。そばがきの作り方は、「レシピ」というよりも“こんな感じで作る”という感覚のものです。
次回は、そば粉と水の割合を変えたそばがきや「椀がき」、さらにそばがきを使った料理をご紹介します。
盛りだくさんの内容ですので、ぜひ続きもお楽しみに。


著者紹介

蕎麦料理研究家 永山塾主宰
永山 寛康

<プロフィール>
1957年(昭和32年)生まれ。
21歳でそば打ちの世界に入る。名人と名高い片倉康雄・英晴父子に師事し、そば打ちの基本を学ぶ。『西神田 一茶庵』『日本橋三越 一茶庵』に従事した後、『立川 一茶庵』で店長を務める。その後、手打ちそば教室の主任講師などを努め、2004年より「永山塾」を開塾。長年研鑚を積んだそば技術やそば料理の技術を多くの人に教える。

感情豊かなそば打ちやそば料理の指導に、プロアマ問わずファンは多い。近年はそば関連企業と連携して、開業希望者やそば店等への技術指導にも活躍中。

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