フィレンツェでそばを打つ/宮殿のそば会 Ⅱ



正直、不安のまま走り出したフィレンツェのそば会。一番の懸案だった仕入れは済ませてあるので、先ずは一安心。ここまで来たらもう、何とか突っ走って乗り切るしか無いだろうと腹をくくった。この日は、会場の下見と食材・そば打ち道具の搬入と汁の仕込み。そば打ちは本番直前に打つ予定だ。

この建物がメディチ家の礼拝堂。そして右側の建物に直角方向に向き合って隣接するのが今回の会場の・・
 
・・こちら、アルドブランディーニ教皇宮殿。
入口のアーチの大きさからも、天井の高さを察っする事が出来る。

大きなアーチ型の扉はとても重く重厚な作りになっている。一人では動かせないくらいだ。
下の階は、たたきのままで何も無く、薄暗い倉庫の様だ。
天井が高いので尚更の事、少し不気味な空間。
恐らくここは昔、馬車などを置いていたのではないだろうか。
階段を昇る。室内に入って驚いた。広い。ひたすら広い。
見上げれば天井画。今回のそば会で使わせて頂くのは、メインのダイニングルーム・控えに使う書斎・そば打ちと配膳に使うサービス部屋、そして厨房。

厨房以外の部屋の天井には全て絵が描かれて居る。
 
こちらは石板。

天井は平面ではなく、深く弓状に奥行きがある。

サービス部屋に設置した、大理石の打ち台に持参した鉢を設置。
木の鉢なら大きくてもそこそこの重さだけれど、樹脂製は大きさの割に重くなる。持参した荷物の中でこれが特に苦労した。

高い天井の立派な厨房。ストーブ・冷蔵庫共にも十分な設備。
そして、こちらもとても広い。食器は現オーナーさんのコレクションの皿や器を使わせて頂く事になっている。どの料理を盛り付けるか、打ち合わせをする。
どの皿にはこれ、この器にはこんな感じでと、イメージして振り分けた。
何でもこの食器類は、年代物のとても貴重な品だそうで、取り扱う時の現オーナーさんのチェックの目付きが厳しい。慎重に丁寧に扱わなければいけない。
この日の内に出来る仕込みをしておく。
 
話は少し前に戻るけれど、そもそもこの『フィレンツェのそば会』は何故、宮殿で開催されるのか?と言う事柄。疑問に思っていた。その答えの鍵は、マニフィコクラブ福井代表の御夫君と関係がある。この方は、フィレンツェモザイクのマエストロとして美術工芸家。また、長い間美術商を手広く営んで居られる経済人でもある。美術品の店を『ピッティ宮殿』の真向かいに構えておられる。話を伺えば、 
 「昔から文化は上から降り注ぐように広まって行った」と仰る。
「異国の文化を理解してもらうために」この地で影響力のある人々を招待客を選んだとの事。
確かに、招待されるお客様もやはり『宮殿で異国の食を味わう』機会は、なかなか経験出来ない。納得である。

美術店舗内。
  
ちょうど、私がフィレンツェに着いた翌日が、メンズファッションの世界的に有名な見本市『ピッティ・イマージネ・ウォモ』(通称ピッティ・ウォモ)の最終日で、最新ファッションを身にまとった男性モデル達が街中を闊歩していた。道ゆく人々から声をかけられると、一緒に写真に収まるサービスをしてくれる。元々この見本市は、ピッティ宮殿を会場にして開催されていて、今は名称だけが残っているそうだ。

さぁいよいよ明日は、本番を迎える。
帰り道、街ではにぎやかに時代がかったパレードをしていた。

 フィレンツェでそばを打つ/宮殿のそば会Ⅲに続く

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