変わりそば『芥子切り』/困った時の芥子頼み・そばっ喰い基礎講座No.7

しょうじょうじの タヌキばやしみたいな
ぽんぽこメロディが きこえてくるよ〜🎶〜♪〜♫

🎶 かむかむエブリバディ〜
みんなでいっしょに そばたべよ〜

つっつっ月見そばより〜
おいらは たんたんタヌキそば〜🎶

「みなさん、こんにちは。もうおなじみですね。
さあ、いよいよこれから、楽しい楽しい『そば喰い基礎講座』の時間が始まります。」

お店では、毎日打つ変わりそば。
季節の変わりそばに加え、もう一色の変わりそばも打たねばならない。
さて、そんな時。何を打ち込もうか――迷ったときの頼もしい味方。

芥子という材料は、普段あまり口にすることがないため、珍しく感じられます。おせちで食べる「松風」や、あんぱんの上にのっているくらいでしょうか。

季節を問わず、いざという時にいつも頼りになるのは、やっぱり芥子なんだなぁ。
何より材料費も安いし、そういう意味でも助けてくれる。ありがたや、ありがたや。まさに、「困った時の芥子頼み」。

芥子切りは、『粒物』の変わりそば。胡麻・山椒の実・煎ったそば米等々、胡麻以外はそのまま食べることは滅多にない食材。香りを楽しむ変わりそばになるのが特徴です。それ故に、そばに打ち込むと、口に入れた瞬間からふわりと香りが立ち、噛むたびに微かな粒感と香ばしい風味が広がります。粒の持つ個性がさらしなの軽い風味と溶け合い、ただ食べるだけでなく、香りの余韻まで楽しめる一品となるのです。

芥子の実(ポピーシード)の香りを引き出すために煎ります。粒から少し油が出て、粒同士がくっつき始めます。煙が出始めたら火から下ろします。煎り過ぎると、芥子の実が苦くなってしまうので注意。

鍋の余熱で粒に火が入りすぎるのを防ぐために、フライパンから別の器に移して冷まします。香りは少し弱くなりますが、冷めた芥子の実はこのまま密閉して保存出来ます。次の機会に打つ際にも使えます。これよりも、もう少し煎りを浅くすると薄茶色の粒色になり、そばに打ち込んだ時にきれいに仕上がります。ただし、香りは弱くなります。

練り上げたさらしなの生地に煎った芥子の実を練り込みます。500gの粉に対して、大匙すり切り2杯が目安。あくまで目安ですから、打ち易さと香りのバランスで調整します。

この際の一番の注意点は強く練らない事。強く練り過ぎると、芥子粒が潰れて生地が汚れてしまいます。

練り上げた生地。

粒があるので、薄く延し過ぎるとそばが切れ易くなります。厚めに延して、切りベラ(延しの厚さより切りの幅が狭い)で仕上げると、切れにくいそばになります。打つ事は決して難しいそばではありません。何より延し過ぎに注意。

作り手としては打ち易く、何よりもウケが良い人気の変わりそば『芥子切り』。本当、いつも頼りにしてまっせ

さて、第七回目は「芥子切りそば」でした。いかがでしたか?知らず知らずのうちに、楽しく役に立ったり、ちょっと役に立たなかったりしたのではないでしょうか。それでは、みなさん、また次回の『そばっ喰い基礎講座』でお会いしましょう。

ふと耳を澄ますと、しょうじょう寺のタヌキ囃子のようなメロディが聞こえてきました。🎶〜♪〜♫

🎶 トコトコ・ポンポン、噛む噛むエブリバディ〜
みんなで一緒に、そばを食べよ〜
つ、つ、月見そばより〜
オイラはたん、たん、タヌキそば〜 🎶

 

著者紹介

蕎麦料理研究家 永山塾主宰
永山 寛康

<プロフィール>
1957年(昭和32年)生まれ。
21歳でそば打ちの世界に入る。名人と名高い片倉康雄・英晴父子に師事し、そば打ちの基本を学ぶ。『西神田 一茶庵』『日本橋三越 一茶庵』に従事した後、『立川 一茶庵』で店長を務める。その後、手打ちそば教室の主任講師などを努め、2004年より「永山塾」を開塾。長年研鑚を積んだそば技術やそば料理の技術を多くの人に教える。

感情豊かなそば打ちやそば料理の指導に、プロアマ問わずファンは多い。近年はそば関連企業と連携して、開業希望者やそば店等への技術指導にも活躍中。

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