『そばっ喰い基礎講座』No.4/「胡麻切り」そば料理の好材料

しょうじょう寺のタヌキ囃子の様なメロディが聞こえてきます。🎶〜♪〜♫
🎶 噛む噛むエブリバディ〜 みんなで一緒ににそば食べよ〜 

 つ、つ、月見そばより〜 オイラはたん、たん、タヌキそば〜 🎶

「みなさんこんにちは、久しぶりですお元気でしたか!さぁ、いよいよこれから楽しい楽しい、そばっ喰い基礎講座の時間が始まります」

今回の「胡麻切り」は、変わりそばの中でも少し変わった存在です。

北海道では「胡麻そば」の看板をよく見かけます。ただ、この変わりそばとは異なり、そばに胡麻を少量打ち込んだ物です。ツルツルそばに胡麻が入った物ですね。
「胡麻切り」は、そば生地に沢山の煎り胡麻を打ち込みます。
この変わりそばをレギュラーで提供している店は、ほとんど無いと思います。

何故?かと言えば、胡麻を多量を打ち込まなければならないので材料費がかさむ事。油が出るので繋がりにくく手間がかかる事。茹で釜に油が浮いて胡麻の粒がそば釜に沈んでしまう事。何よりも、胡麻はあまりに身近な食材、日常に存在しているので、有難がられない事!ツルツル食べるそばと言うより、そばの料理材として重宝するちょっと変わった「変わりそば」です。

このそば生地は、普通のそば粉をそばがき状にして胡麻を練り込んだ物。
真っ黒になってます。手でつぶしながら平く延ばして行きます。

  

胡麻が沢山入っているので、端が割れない様に押さえながら、慎重に四角く薄くしています。

延し棒を使い生地が2.5mm位の厚みになったら、手駒か延し棒を転がしながら、3mmの幅に切ります。

これを「算木に切る」と言います。一般に拍子木切りと言いますが、この位の太さは、やはり算木切りが合いますね。これを素揚げして、揚げて直ぐ塩を振れば、それだけで美味しい「胡麻切り揚げ」が出来ます。

胡麻切りは、そば料理では「白和え」に使うことが多いです。伝統の「胡麻切りの白和え」。豆腐を茹でて巻き簾で巻いて水を切り、裏漉しをします。

豆腐に砂糖と少量の塩で味を付け、茹でたにんじん・三つ葉・きくらげを提供寸前に和えます。この胡麻切り白和えには、滑らかさとコクを出すために。クリームチーズも加えています。仕上げには、揚げたそば米を振りかけて。

「胡麻切り白和え」の生地を丸めて片栗粉をまぶして揚げれば、「胡麻切り飛龍頭」が出来ます。秋ならば銀杏を加えます。

餡をトロリとかけて召し上がれ。 

『雑誌・主婦の友』昭和28年11月号で、私の師匠の「胡麻切りサラダ」を作った記事が掲載されています。本来は胡麻切りを柚子釜(柚子の中身をくり抜いて器にする)にする所ですがと断りつつ、この時はピーマンをバターで炒めて器にした様です。このサラダは、茹でた胡麻切りにマヨネーズを和えないで上からかけてと書いてあります。和えるとグチャッとするからだそうです。今から七十数年前、戦後わずか数年の時代に、このそば料理の感覚は、さすがに当時の凄く先端を行っていた事でしょう。

 さて、第四回目は「胡麻切りそば」でした。いかがでしたか?知らず知らずのうちに、楽しく役に立ったり、立たなかったりしましたでしょうか。それでは、みなさん。また、次回の『そばっ喰い基礎講座』でお会いしましょう。
しょうじょう寺のタヌキ囃子の様なメロディが聞こえてきました。🎶〜♪〜♫
🎶 噛む噛むエブリバディ〜 みんなで一緒ににそば食べよ〜 

つ、つ、月見そばより〜 オイラはたん、たん、タヌキそば〜 🎶 

著者紹介

蕎麦料理研究家 永山塾主宰
永山 寛康

<プロフィール>
1957年(昭和32年)生まれ。
21歳でそば打ちの世界に入る。名人と名高い片倉康雄・英晴父子に師事し、そば打ちの基本を学ぶ。『西神田 一茶庵』『日本橋三越 一茶庵』に従事した後、『立川 一茶庵』で店長を務める。その後、手打ちそば教室の主任講師などを努め、2004年より「永山塾」を開塾。長年研鑚を積んだそば技術やそば料理の技術を多くの人に教える。

感情豊かなそば打ちやそば料理の指導に、プロアマ問わずファンは多い。近年はそば関連企業と連携して、開業希望者やそば店等への技術指導にも活躍中。

記事一覧に戻る